地域マネジメント支援システム(JAGES HEART) JAGESでは、健康とくらしの調査を用いて、地域分析のための「見える化」システムを構築しています。JAGESの見える化システムの名称を「地域マネジメント支援システム(英語表記:JAGES HEART)」として、主に行政向けに提供しています。 地域マネジメント支援システムは、介護保険者の介護保険事業計画策定に活用することが可能であり、介護予防・日常生活圏域ニーズ調査の項目を中心として指標が掲載されています。保険者機能強化推進交付金への評価、一般介護予防事業評価事業への活用にも活用できます。また、介護予防だけでなく、高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施へも活用できるように、健診データとの連携にも着手しました。 その他、通いの場関連指標(介護保険事業計画)、防災指標(地域防災計画)、地域共生指標、「する」「みる」「ささえる」スポーツ関連指標などの、行政が策定する各種計画等に役立つことができるようなシステム開発・研究を行っています。
地域マネジメント支援システムで出来ること 地域マネジメント支援システムには、市町村間比較(市町村レベル)と市町村内比較(小地域レベル)の2つのレベルがあります。 ・2つのレベル ① 市町村間比較 JAGES2022に参加した75市町村と比較することが可能です。ある指標(例えば運動機能低下者割合)について、75市町村の中で、どこの位置(順位)かを確認することでき、対象市町村の値が相対的に良いか悪いかを検討でき、対象市町村の重点対象課題が設定できます。 ② 小地域間比較 対象市町村内(例えば小学校区)を比較することが可能であり、対象市町村内においても、どこの小学校区の値が良いか悪いかを検討でき、重点対象地域が設定できます。
・相関分析
散布図レポート 地域間比較で重点課題や重点対象地域を選定した後、どのように「地域づくり型の介護予防事業計画」を策定していくか、具体的に検討する必要があります。この散布図レポートは、具体策を検討する上で手がかりの発見として、参考になると思われます。
地域マネジメントシステムの使い方・読み取り方
VIDEO
(2023年度第1回保険者共同研究会「地域マネジメントシステムの結果の読み取り方」より)
地域マネジメント支援システム(JAGES HEART)の指標の種類
指標の信頼性と妥当性の評価
下記の論文の表1をご覧ください。
井手一茂,鄭丞媛,村山洋史,宮國康弘,中村恒穂,尾島俊之,近藤克則:介護予防のための 地域診断指標-文献レビューと6基準を用いた量的指標の評価.総合リハビリテーション.46(12):1205-1216,2018. 井手一茂,宮國康弘,中村恒穂,近藤克則.個人および地域レベルにおける要介護リスク指標とソーシャルキャピタル指標の関連の違いーJAGES2010横断研究ー.厚生の指標65(4):31-38 2018.
地域マネジメント支援システムを用いた市町村支援の事例 介護予防政策には「課題の設定」「介入施策の立案」「プログラムの実施」「効果評価」という一連の流れがあります。これらの各プロセスを直線的にではなく、循環的に進めていくことにより、中・長期的な視点での介護予防の推進や健康格差の是正に取り組むことが大切です。
辻大士, 宮國康弘. 今こそ地域診断~介護予防編~: 地域マネジメント支援システム等を用いた地域診断の進め方. 月刊地域医学 32(10): 42-49, 2018. 安保育子, 中村廣隆, 大戸好穂, 加藤木かおり, 大河原亜矢子, 日比野津貴子 : 多機関における地域診断の研修実践報告-都市部委託型地域包括支援センターが主催する研修方法について-,東海公衆衛生雑誌6(1),2018. 中村廣隆, 小嶋雅代, 村田千代栄: 住民主体の介護予防に向けた取り組み 地域課題の共有するワークショップを通じて. 東海公衆衛生雑誌 4 (1): 55-59, 2016 山谷麻由美,近藤克則,近藤尚己,荒木典子,藤原晴美:長崎県松浦市における地域診断支援ツールを活用した高齢者サロンの展開 -JAGESプロジェクト-,日本公衆衛生雑誌,63(9):578-585,2016 (査読有) 岡田栄作, 杉田恵子, 櫻木正彦, 尾島俊之, 近藤克則:福祉の現場から 地域包括ケアシステム構築のための地域診断活用支援プログラム開発の試み, 地域ケアリング:18(1), 56-60, 2016 (査読無) 鈴木佳代,近藤克則【特集論文】:見える化システム JAGES HEARTと用いた介護予防における保険者支援. 医療と社会24 (1):75-85. 2014.
1 介護予防の見える化
1.介護予防の「見える化」のねらい
これまでのJAGESの研究の蓄積から構築された、介護予防への関連の深い項目を、各種設問を組み合わせて指標として表し「見える化」します。そのことで、住民や担当者が地域・自治体の現状や課題を把握し、有効な介入施策を立案・実施・モニタリング・評価することを支援することが目的です。
2.介護予防の「見える化」指標一覧
「見える化」システムに掲載された、介護予防に関連した指標は以下のものがあります。
3.「見える化」した指標を選んだ科学的根拠
JAGESの長年の研究の蓄積から、介護予防」についての指標を選ぶに至った科学的根拠の一部をご紹介いたします。
●10問の質問項目で高齢者の要支援・要介護リスクを評価する尺度を開発しました。
―全国23市町の高齢者90,889の健康にかかわる質問紙の調査データを用い、約3年以内に要 支援・要介護認定を受けるリスクを高める要因を探しました。
―その結果、特に重要な10個の質問項目が選び出され、48点満点(点数が高いほど高リスク)の 尺度が開発されました。この尺度は、自治体の規模(都市度)に関わらず、要支援・要介護認定 の発生を高い精度で予測できることが確認されました。 *辻 大士(筑波大学)全国版「要支援・要介護リスク評価尺度」開発自治体の都市度を問わず、10問で要支援・要介護リスクを点数化. JAGES Press Release No:152-18-15. より引用
4.介護予防関連その他の研究成果について
JAGESの長年の研究の蓄積における、介護予防関連のプレスリリースを以下の場所より検索できます。
タグ・検索語の例
介護予防 介護 介護保険 基本チェックリスト 年齢 バス 不安 歩行 要介護・要支援リスク 評価 外出 買い物 転倒 歩行 リスク要因 うつ 運動 健康 男性 預金 うつ 買い物 栄養 残歯 認知症 物忘れ フレイル 生活機能 身体機能 など(1つもしくはスペースを挟んで複数を入力)
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2 社会参加の見える化
1.社会参加の「見える化」のねらい
社会参加の有無、回数、種類を「見える化」します。そのことで、住民や担当者が地域・自治体の現状や課題を把握し、有効な介入施策を立案・実施・モニタリング・評価することを支援することが目的です。
2.社会参加の「見える化」指標一覧
「見える化」システムに掲載された、社会参加に関連した指標は以下のものがあります。
3.「見える化」した指標を選んだ科学的根拠
JAGESの長年の研究の蓄積から、社会参加の中の「通いの場」についての指標を選ぶに至った科学的根拠の一部をご紹介いたします。
●愛知県武豊町では、2007 年 5 月から生活機能が自立した高齢者が集い、お話や体操などを行う「憩い のサロン」を設け、規模を拡大しながら活動を継続しています。JAGES(日本老年学的評価研究)プロジ ェクトではサロン開設前後で参加者の状況を 2012 年 3 月まで追跡し、どのような人が頻繁にサロンに通 い、それによって要介護認定を受けるリスクが低下したかどうかを検証しました。サロン開設から5年 の観察期間においてサロンに頻繁に参加していた人は、そうでない人と比べて要介護認定を受けるリス クが半分であることが示されました。今後は、同じような取り組みを行っている他自治体のデータも検 証することで知見の再現性を確認したり、特に予防効果の大きい活動内容を明らかにするための研究が 必要になります。 サロン開設から5年の観察期間において、サロンに頻繁に参加していた人は、そうでない人よりも要介 護認定を受けるリスクが低いことが示されました(操作変数法を用いて算出されたハザード比 0.5)。今 後は、同じような取り組みを行っている他自治体のデータも検証することで知見の再現性を確認したり、 特に予防効果の大きい活動内容を明らかにするための研究が必要になります。
*引地博之( Harvard T.H. Chan School of Public Health)高齢者が交流を持つ「コミュニティ・サロン」をまちに設置すると,要介護認定率が半減する可能性がある. JAGES Press Release No:056-15-01:より引用
4.社会参加関連その他の研究成果について
JAGESの長年の研究の蓄積における、社会参加関連のプレスリリースを以下の場所より検索できます。
タグ・検索語の例
社会参加 通いの場 サロン スポーツ 介護予防 趣味 スポーツ 交流 健康 社交性 ソーシャルキャピタル
ボランティア 老人会 助け合い 地域 情報 信頼感 など(1つもしくはスペースを挟んで複数を入力)
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3 地域共生の見える化
1.地域共生の「見える化」のねらい
地域に存在する信頼感や絆、相互協力などは、地域社会と個人の健康に大きく影響を与えることがわかってきています。地域社会に存在するこれらの資源を「見える化」することで、住民や担当者が地域・自治体の現状や課題を把握し、有効な介入施策を立案・実施・モニタリング・評価することを支援することが目的です。
2.地域共生の「見える化」指標一覧
「見える化」システムに掲載された、地域共生に関連した指標は以下のものがあります。
3.「見える化」した指標を選んだ科学的根拠
JAGESの長年の研究の蓄積から、地域共生の中から「ソーシャルキャピタル」についての指標を選ぶに至った科学的根拠の一部をご紹介いたします。 *斉藤 雅茂(日本福祉大学
)健康に関連する地位の社会関係資本の測定指標の開発~社会参加や連帯感、互助が豊かな地域に暮らす高齢者は健康度が高い~. JAGES Press Release No:086-16-16:より引用 4.地域共生関連その他の研究成果について JAGESの長年の研究の蓄積における、地域共生関連のプレスリリースを以下の場所より検索できます。
タグ・検索語の例
ソーシャルキャピタル 社会関係資本 地域 地域共生 愛着 うつ 介護予防 コミュニティ 参加 社会参加 市民参加 趣味 心配信用 信頼 スポーツ 世話 地域 地域診断 ネットワーク ボランティア 抑うつ 連帯感 など(1つもしくはスペースを挟んで複数を入力)
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1.防災の「見える化」のねらい
被災後に予想される各地域の健康リスクや減災に資するリソースを「見える化」します。そのことで、住民や防災担当者が地域・自治体の現状や課題を把握し、有効な介入施策を立案・実施・モニタリング・評価することを支援することが目的です。
2.防災の「見える化」指標一覧
「見える化」システムに掲載された、介護予防に関連した指標は以下のものがあります。
3.「見える化」した指標を選んだ科学的根拠 岩沼プロジェクト(東日本大震災で被災した宮城県岩沼市の高齢者5,058人を被災前から追跡し、得られた以下のような知見)から、重要性が確認された指標群を選びました。
①うつや生活機能が非自立であるフレイルや要介護リスク者などの要配慮者は、震災時や震災後の死亡リスクが高い
震災当日の死亡リスクは震災時に重度のうつ症状傾向であった場合、震災翌日以降の死亡リスクは震災時に一部要介護や要介護状態であった場合、それらがない場合と比べて高くなっていました。これらがある人が逃げ遅れないように支援することと同時に、うつや要介護リスク者を減らす介護予防の取り組みが重要であると考えられます。
(Aida J, Hikichi H, Matsuyama Y, Sato Y, Tsuboya T, Tabuchi T, Koyama S, Subramanian SV, Kondo K, Osaka K, Kawachi I: Risk of mortality during and after the 2011 Great East Japan Earthquake and tsunami among older coastal residents. Sci Rep. 2017 Nov 29;7(1):16591. doi:10.1038/s41598-017-16636-3.)
②社会的結びつきが豊かな人ほど、ストレス障害発症が抑えられる
震災で大切な人を亡くすなどした人では震災後の心的外傷後ストレス障害(PTSD)のリスクが高まっていました。一方、震災前の近隣住民との社会的なつながりが豊かな人や地域コミュニティほど、PTSD発症リスクが抑えられていました。また、社会的結びつきが豊かな地域に暮らしていた人ほど、PTSDの発症リスクが抑えられていました。
(Hikichi H, Aida J, Tsuboya T, Kondo K, Kawachi I: Can Community Social Cohesion Prevent Posttraumatic Stress Disorder in the Aftermath of a Disaster? A Natural Experiment From the 2011 Tohoku Earthquake and Tsunami. Am J Epidemiol. 2016 May 15;183(10):902-10.doi:10.1093/aje/kwv335. Epub 2016 Mar 29.)
③社会的結びつきが豊かな地域ほど、震災後の生活機能低下が軽減される
震災前に社会的な結びつきが強い地域に暮らす人では、まわりとの結びつきが弱い個人であっても、住宅被害による生活機能低下が軽減されていました。結びつきが豊かな地域づくりによって、住宅への被害や転居に伴う健康への悪影響を緩和できる可能性が示されています。
(Gero K, Hikichi H, Aida J, Kondo K, Kawachi I: Associations between community social capital and preservation of functional capacity in the aftermath of a major disaster. Am J Epidemiol. 2020 Nov 2;189(11):1369-1378. doi:10.1093/aje/kwaa085.)
4.防災関連その他の研究成果について
JAGESの長年の研究の蓄積における、防災関連のプレスリリースを以下の場所より検索できます。
タグ・検索語の例
防災 岩沼市 仮設住宅 近隣 交流 健康影響 健康状態 災害 受信 コミュニティー 住居 集団入居 精神障害 ソーシャルサポート 助け合い 心的外傷後ストレス障害 うつ 男性 認知症 コミュニケーション 就労 結びつき 地域 東日本大震災 被災者 など(1つもしくはスペースを挟んで複数を入力)
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5 スポーツの見える化
1.スポーツの「見える化」のねらい
スポーツ活動への参加が健康に影響することは以前からわかっていましたが、直接スポーツをすることのみならず観戦したり運営にかかわることなども、地域や個人の健康に良い影響を与えていることが少しずつ分かってきました。そこで、これまでのJAGESの研究の蓄積から構築された、スポーツへの関連の深い項目を指標として表し「見える化」します。そのことで、住民や担当者が地域・自治体の現状や課題を把握し、有効な介入施策を立案・実施・モニタリング・評価することを支援することが目的です。
2.スポーツの「見える化」指標一覧
「見える化」システムに掲載された、スポーツに関連した指標は以下のものがあります。
3.「見える化」した指標を選んだ科学的根拠
JAGESの長年の研究の蓄積から、スポーツについての指標を選ぶに至った科学的根拠の一部をご紹介いたします。
●スポーツグループが盛んな地域に暮らす高齢者は、参加しているか否かに関わらず、うつや認知 症のリスクが低いことが分かっています。果たしてなぜ、参加していない人まで健康なのでしょうか。本 研究では、全国39市町の1000地域、約9万人の非参加者のデータを分析しました。その結果、地域 全体の高齢者のスポーツグループ参加割合が高い地域に暮らしていると、たとえ非参加者であって も、運動・スポーツへの関心・意欲や実践状況が良好であり、閉じこもりのリスクが6%低いことが明らか になりました。
1000地域のスポーツグループ参加割合の平均は26.7%(最小2.0%~最大50.5%)でした。非参加者の行動変容ス テージは、約4割が無関心期であった一方、約2割は実行期・維持期でした。また、閉じこもりの高齢者は8.2%でし た。地域のスポーツグループ参加割合が10%ポイント高くなる(=地域の高齢者の10人に1人が新たに参加する)に つれ、その地域に暮らす非参加者の行動変容ステージが平均で0.06段階高くなる結果が確認されました。同様 に、閉じこもりのリスクは6%低くなる結果が確認されました。 *辻 大士(筑波大学) スポーツグループが盛んな地域では、非参加者でも健康意識や行動が良好~運動・スポーツへの”無関心”が少なく、閉じこもりの可能性が6%低い~ JAGES Press Release No:261-20-52より引用。
4.スポーツ関連その他の研究成果について
JAGESの長年の研究の蓄積における、介護予防関連のプレスリリースを以下の場所より検索できます。
タグ・検索語の例
スポーツ スポーツグループ 参加割合 非参加者 健康意識 閉じこもり 性 年齢 教育歴 所得 飲酒
独居 社会参加 二次用生活自立度 運動 など(1つもしくはスペースを挟んで複数を入力)
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6 健診の見える化
1.健診の「見える化」のねらい
健診の項目のうち、フレイルに繋がりやすく注意が必要な検査項目、保健関係者等の支援を提供した人の割合等を「見える化」します。そのことで、住民や担当者が地域・自治体の現状や課題を把握し、有効な介入施策を立案・実施・モニタリング・評価することを支援することが目的です。
2.健診の「見える化」指標一覧
「見える化」システムに掲載された、健診に関連した指標は以下のものがあります。
3.「見える化」した指標を選んだ科学的根拠
JAGESの長年の研究の蓄積から、健診の指標を選ぶに至った科学的根拠の一部をご紹介いたします。
●フレイル(虚弱)とは心身の機能が著しく低下し、要介護・死亡に繋がりやすい状態で、高齢者に多
く発症するとされています。本研究では健康診断の情報を使い、フレイルと関連するバイオマーカー
を明らかにし、フレイルにいち早く気づく一助となることを目指しました。
要介護の認定を受けていない65歳以上の男女3128名を、「体重減少」「元気がない」「椅子から
立ち上がるときにつかまる必要があるか」の有無で、フレイルなし(0)、中程度フレイル(1)、フレイル
(2+)に分け、健康診断項目との関連を調べました。
その結果、高アルブミン値、低ヘモグロビン値、低HDLコレステロール値、高Hb1Ac値(女性のみ)が
中程度フレイル(各リスク値:1.99, 1.36, 1.36, 1.18)とフレイルの両方(各リスク値:2.27, 1.59,
1.40, 2.56)に関連があることがわかりました。健診データがフレイルに至る過程を知る良い指標にな
る可能性が示されました。 要介護・死亡の原因となるフレイル発症プロセスはまだ明らかにはなっていないものの、アルブミン、ヘモグロビン、
HDLコレステロールが関わっている可能性が示されました。
*ケイブル典子(University College London ) 健診データとフレイル(虚弱)の関連 高アルブミン値、低ヘモグロビン値、低HDLコレステロール値、高HbA1c値でリスク1.4~2.6倍 JAGESPress ReleaseNo:137-17-29より引用。
4.健診関連プレスリリース一覧
JAGESの長年の研究の蓄積から、健診関連のプレスリリースをご紹介します。
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