日本老年学的評価研究
Japan Gerontological Evaluation Study
 
 

高齢者のインターネット利用と健康の関連について、
JAGESと京都大学より報告書がリリースされました


同報告書に掲載された内容は、世界保健機関西太平洋事務局(World Health Organization, Western Pacific Regional Office; WPRO)にも提出されています。

本調査報告書には、軍事クーデター前の2018年に行ったミャンマーでの調査結果を掲載しています。JAGES一同は一刻も早くミャンマーの情勢が正常化することを願っています。


本報告書の要旨(Executive summary)をご紹介します。

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 特にコロナ禍において、デジタル技術は健康に役立つツールとして世界中で重要性を増しています。パンデミックで都市機能が麻痺するロックダウン下では、高齢者にとってもオンラインサービスへのアクセスがいかに重要であるかが浮き彫りになりました。社会経済状況で異なると仮定される高齢者のデジタルアクセスのレベルを検証し、対応策に示唆を与えるエビデンスを迅速に提供することが重要です。高齢者は、生物学的(移動性、視力、認知機能、メンタルヘルスの障害など)および社会的(低所得、孤立、社会的排除など)に不利な状況にあるため、デジタル機器やインターネットへのアクセスが制限されている可能性が高いと言われています。世界最長寿国である日本は、必要なエビデンスを提供できる立場にあります。


 本報告書では、日本全国約40の自治体とミャンマーの2つの地域を対象に、横断データおよび追跡データを用いた分析を行いました。結果として、日本では、高齢者の半数がインターネットを利用していました。社会経済状況との関連では、日本とミャンマー両国において、低所得であることや教育歴が低いこと、さらに都市部より地方に住んでいることなどがインターネットアクセスの障壁になっていることがわかりました。(図1)。


 他方、日本では、インターネットを定期的に利用していることが健康やウェルビーイングに良い関連があるという分析結果が多く認められました。主な結果としては、インターネットをよく利用していると、うつ病のリスクが低いこと、主観的健康感が高い状態であること、日常生活動作(ADL)の能力が高いこと、社会的関係が良好であることなどが挙げられます。注目すべきは、これらの関連は、所得、教育水準、その他の社会経済的要因の影響を調整しても、認められました。つまり、各々が置かれている所得や教育水準、その他の社会経済要因に関わらず、インターネットの利用を効果的にできるようになることが健康を維持する要因になりうるということが示唆されました。


 インターネット利用者は、非利用者に比べ、より社会的に活動的であることもわかりました(図2)。
ほぼ毎日インターネットを利用している人は、買い物や銀行取引などにインターネットを利用しており、高齢者が日常生活で必要な活動を行う上で、インターネットの利用が役立っていることがわかりました。また、社会的に不利な立場にあるためにうつ病になるリスクが高かった人でも、インターネットの利用により、うつ病のリスクが約40%低下することもわかりました(図3)。



図1.個人要因ごとのインターネット利用(51ページ)



 
図2.インターネット利用と社会参加 追跡調査の結果(43ページ)



図3.学歴とうつ発症の関連におけるインターネット利用の役割(54ページ)




図4.本研究で明らかにしたこと(85ページ)


両国の高齢者における社会経済状況によるインターネットアクセス格差の存在を示す有力なエビデンスがしめされました。この格差に着目し、あらゆる高齢者がインターネットに気軽にアクセスし、その恩恵を享受できる環境を整えることは政策立案者の優先事項と言えるのではないでしょうか。今回の調査結果は、インターネット格差の解消が、高齢者の健康格差を縮小する可能性を示しました。本報告書は、高齢者のインターネット格差の複雑な実態を解明するための最初の一歩に過ぎません。今後の研究で、西太平洋地域に住む高齢者のインターネットアクセス、社会経済的地位、健康とウェルビーイングを結びつけるメカニズムが解明されることを期待しています。(図4)。




図5.政策提言(87ページ)


さらに、今後の研究では、より高度な因果推論モデルと、日本やミャンマーなどの豊富で質の高いデータを適用し、高齢者の健康とウェルビーイングにおけるインターネット利用の因果関係を確認することを期待します。ミャンマーを含む他のアジア諸国においても今後の調査から、より確かな知見を見いだしてゆく必要があります。また、健康に影響を与える様々な社会的要因を考慮しながら、公的なデータを用いて、インターネット利用が死亡率や医学的に診断された疾病の発症など、様々な健康上の成果に与える影響を調査することも求められています。くわえて、インターネット利用と高齢者の健康とウェルビーイングの複雑な関係を理解するために、インターネット利用、社会経済的地位(SES)、医療制度の間の関連性を検証する必要があります。このような課題を包括的に理解することにより、社会経済的地位にかかわらず、すべての高齢者がインターネット利用から得られる健康上のメリットを享受できるように、高齢者にリソースを提供したり、デジタルリテラシーを向上させたりするなど、効果的な介入策を設計するのに役立つでしょう。

私たちの社会は急速にデジタル社会へと移行しており、世界的なCOVID-19パンデミックにより、さらに加速しました。インターネットの利用が日々の生活に欠かせないものになるにつれ、デジタルの波に取り残された人々は、身体的、精神的、社会的に多くの不利益を被ることになる可能性があります。高齢者のデジタル技術と健康の格差を示す今回のエビデンスは、現在のパンデミックの余波で発生した公衆衛生問題を地域、国、世界レベルで調査するための今後の研究の足がかりとなるでしょう。


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Understanding the role of Internet access on health and health equity toward healthy ageing in the Western Pacific Region/ Naoki Kondo, Chie Koga and Yuiko Nagamine (Editors). Ver.1.1.
ISBN 978-4-9910804-3-2

Version 1.1. Minor description correction, Published on 14. Sep. 2021 
Version 1.0. Published on 26. Aug. 2021

Suggested citation. Kondo N, Koga C, Nagamine Y editors. Ota A, Shobugawa Y, Cable N, Tajika A, Nakagomi A, Chishima I, Ide K, Ueno T, Fujihara S, Fujinami Y, Yasufuku Y, and Ando Y. Understanding the Role of Internet Access on Health and Health Equity toward Healthy Ageing in the Western Pacific Region. 2021, ISBN 978-4-9910804-3-2

Contact
KYOTO UNIVERSITY
DEPARTMENT OF SOCIAL EPIDEMIOLOGY
GRADUATE SCHOOL OF MEDICINE / SCHOOL OF PUBLIC HEALTH
Floor #2, Science Frontier Laboratory
Yoshidakonoe-cho Sakyo-ku Kyoto 606-8501 JAPAN
E-mail:contact@socepi.med.kyoto-u.ac.jp

Japan Agency for Gerontological Evaluation Study (JAGES)
6-3-5 Yanaka, Taito-ku, Tokyo 110-0001, Japan
Email: jages-office@jages.net


ACKNOWLEDGEMENTS
This report, entitled Understanding the role of Internet access in older people’s health outcomes for the Healthy Ageing in the Western Pacific Region, was prepared by Department of Social Epidemiology at Kyoto University and Japan Agency for Gerontological Evaluation Study (JAGES Agency). This report was funded by World Health Organization Western Pacific regional Office.

This study used data from JAGES 2016 (the Japan Gerontological Evaluation Study), JSPS (Japan Society for the Promotion of Science) KAKENHI grant numbers (JP15H01972, JP15H04781, JP15H05059, JP15K03417, JP15K03982, JP15K16181, JP15K17232, JP15K18174, JP15K19241, JP15K21266, JP15KT0007, JP15KT0097, JP16H05556, JP16K09122, JP16K00913, JP16K02025, JP16K12964, JP16K13443, JP16K16295, JP16K16595, JP16K16633, JP16K17256, JP16K19247, JP16K19267, JP16K21461, JP16K21465, JP16KT0014, 19K04785, 20H00557, JP25253052, JP25713027, JP26285138, JP26460828, and JP26780328), Health Labor Sciences Research Grants (H26-Choju-Ippan-006, H27-Ninchisyou-Ippan-001 H28- Choju-Ippan-002, H28- Ninchisyou-Ippan-002, 19FA1012, 19FA2001) from the Ministry of Health, Labor, and Welfare, the Research and Development Grants for Longevity Science from AMED (Japan Agency for Medical Research and development) (16dk0110017h0002, 16ls0110002h0001), the Research Funding for Longevity Sciences from the National Center for Geriatrics and Gerontology (24-17, 24-23), and the Japan Foundation For Aging And Health.
This study used data from the Japan Gerontological Evaluation Study (JAGES, 2019).This study was supported by JSPS (Japan Society for the Promotion of Science) KAKENHI Grant Number (JP15H01972→If necessary, please replace or add your own JSPS grant), Health Labour Sciences Research Grant (H28-Choju-Ippan-002), Japan Agency for Medical Research and Development (AMED) (JP17dk0110017, JP18dk0110027, JP18ls0110002, JP18le0110009, JP20dk0110034, JP20dk0110037, JP20lk0310073, 21lk0310073h0002, 21dk0110037h0003), Open Innovation Platform with Enterprises, Research Institute and Academia (OPERA, JPMJOP1831) from the Japan Science and Technology (JST), a grant from Innovative Research Program on Suicide Countermeasures(1-4), a grant from Sasakawa Sports Foundation, a grant from Japan Health Promotion and Fitness Foundation, a grant from Chiba Foundation for Health Promotion and Disease Prevention, the 8020 Research Grant for fiscal 2019 from the 8020 Promotion Foundation (adopted number: 19-2-06), a grant from Niimi University (1915010), grants from Meiji Yasuda Life Foundation of Health and Welfare and the Research Funding for Longevity Sciences from National Center for Geriatrics and Gerontology (29-42, 30-22, 20-19, 21-20).(If necessary, please add your own grants).

This research was funded by the Japan Agency for Medical Research and Development under the project title: ‘Development of a health equity assessment tool based on a social epidemiological survey of older adults in Myanmar and Malaysia’ (Grant Number 17934739). This research was supported by the World Health Organization Centre for Health Development (WHO Kobe Centre—WKC: K18015) JSPS KAKENHI Grant Number JP19K19472 was also used for research. This work was supported by the MHLW Program, Grant Number JPMH20BA2002.
 
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