地域マネジメント支援システム(JAGES HEART)とは
 JAGESではJAGESデータを活用して日本の高齢者における健康の公平性評価・対応ツール「JAGES HEART」(地域マネジメント支援システム)を開発しています。
JAGES HEARTは、2000年に施行された介護保険の総合的政策評価ベンチマーク・システムとして、日本の政策立案者が高齢者間での健康格差について評価・対応するためのツールです。
WHOの「Urban HEART」(都市における健康の公平性評価・対応ツール)と調和する形で開発するため、WHO神戸センターと連携して取り組みました。
介護予防に取り組む地方自治体が、現状や課題を数値によって「見える化」して改善するまでのプロセスを総合的に支援できるツールとして役立てられています。

比較レベルと画面の種類
《比較レベル》
JAGES HEARTは、市町村レベルと小地域レベルの2つのレベルを見ることができます。
市町村レベル
市町村間で比較した結果を示します。
小地域レベル
市町村内の校区など、市町村内の小地域間で比較した結果を示します。

《画面の種類》
JAGES HEARTには、4種類の画面があります。
1.地域診断書(コア指標)
2.地域診断書(重要指標)
3.重点対象地域選定シート
4.手がかり発見シート

地域診断書とは
 対象となる地域について客観的指標やきめ細かい観察を通して、地域ごとの問題、特徴を把握することを地域診断といいます。
JAGESでは、当該保険者の指標を他保険者と比較し、それぞれの指標値が他の保険者よりもどのくらい大きいのか、または小さいのかを示し、地域診断書を作成します。
《地域診断のメリット》
1.地域の健康課題が明確になる
2.対策の重点対策地域が見えやすくなる
3.地域格差が見えやすくなる
4.地域の健康課題を他部局や住民と共有しやすくなる
5.住民の参加を得やすくなる
6.地域診断の流れ

地域診断書で見える化できること
 介護保険者(市町村・広域連合)の状況を、多市町村・市町村内(小地域間)で比較してベンチマークした結果を地域診断書でご覧いただけます。
1.評価したい対象地域の「要介護リスク」や「社会参加状況」が表示できます。
2.他の対象地域と比べた「良悪の相対的位置」が確認できます。
3.「事業評価」や「どの項目を優先するか」などが把握でき、戦略的な地域政策の立案に活用できます。
4.高齢化率、可住地人口密度、都市度など、該当地域と似た地域で比較ができ、散布図と表で指標の割合を表示できます。散布図と表の表示の切り替えも可能です。
5.対象地域内(同一市町村内の小地域)での比較を、望ましい値は緑、望ましくない値は赤で色分けして分かりやすく表示します。
地域診断書_コア指標
地域診断書_重要指標
地域診断書の見方
地域診断書指標一覧と定義

ベンチマークについて
 ベンチマークとは、もともとは「測量などにおいて利用される水準点・標準」のことです。JAGESの分析支援では、保険者や事業所が提供しているケアの質に関わるプロセスやアウトカムなどに関わる要因について、可能な範囲を数値で表された指標にし、それらを他保者と比較できるようにすることを目指しています。
これにより、他の保険者と比べ、
1.自らの優れた点と課題とすべき点を把握し、
2.取り組み方の違いを分析することで改善策を探り、
3.さらにそれを実行に移した後にその改善効果を比較評価することを目的としています。
候補となる数千の指標の中から、下記の基準から見て重要と判断される指標に絞り込む必要があります。
JAGESは、科学的根拠に基づき、指標の開発研究に取り組んでいます。
ベンチマーク6つの基準
1.正確性
信頼性と妥当性が高い
2.内容的代表性
評価しようとする概念の大きな部分を包含する
3.社会的受容性
行政・施設・国民等から受け入れられやすい
4.学術的重要性
機序から考えた重要性、学術的にみた新規性がある
5.介入可能性
一定期間の介入により変化させることができる
6.入手容易性
指標作成に必要なデータの入手が容易
介護予防政策サポート
 介護予防政策には「課題の設定」「介入施策の立案」「プログラムの実施」「効果評価」という一連の流れがあります。これらの各プロセスを直線的にではなく、循環的に進めていくことにより、中・長期的な視点での介護予防の推進や健康格差の是正に取り組むことが大切です。
JAGES HEARTを全国自治体の現場で応用するために、「介護予防政策サポートサイト」を運営しています。「介護予防政策サポートサイト」は、地域ごとの要介護リスクや高齢者のニーズ、介護予防に資するリソースを「見える化」することで、介護保険担当者の方が自治体の現状や課題を把握し、有効な介入施策を立案・実施・モニタリング・評価することを支援するためのサイトです。
地図やグラフによる見える化、地域診断が可能です。

 
「見える化」システムを使った取り組み事例の論文
  • 安保育子, 中村廣隆, 大戸好穂, 加藤木かおり, 大河原亜矢子, 日比野津貴子 : 多機関における地域診断の研修実践報告-都市部委託型地域包括支援センターが主催する研修方法について-,東海公衆衛生雑誌6(1):51-59,2018
  • 岡田栄作, 杉田恵子, 櫻木正彦, 尾島俊之, 近藤克則:福祉の現場から 地域包括ケアシステム構築のための地域診断活用支援プログラム開発の試み,  地域ケアリング:18(1), 56-60, 2016 (査読無)
  • 小林美紀:楽しく・無理なく・介護予防─地域と協働で進める「憩いのサロン」.保健師ジャーナル 69:386-392,2013.
  • 細川陸也, 近藤克則, 伊藤美智予, 宮國康弘, 水谷聖子, 後藤文枝, 阿部吉晋, 柘植由美, 半田裕子, 尾島俊之: 研究報告「健康交流の家」の利用による健康への効果検証,Effect of Home for Health care on Health Improvement,Bulletin of Social Medicine, Vol.34(2)2017.

  • 細川陸也,伊藤美智予,近藤克則,尾島俊之,宮國康弘,後藤文枝,阿部吉晋,越千明:「健康交流の家」開設による健康増進効果の検証 Effectiveness of "Kenko-koryu-no-ie" in improving health.社会医学研究 : 日本社会医学会機関誌 33(1), 59-69, 2016 (査読有)
  • 近藤尚己:健康格差の評価・測定とその活用 : 熊本県御船町での取り組み事例より (特集 健康日本21(第2次)の初期評価).保健師ジャーナル 71(6), 470-474, 2015-06 (査読無)

武豊PJの文献リスト
(プロジェクト概要や中間アウトカム評価に関するもの)
  • 平井寛,近藤克則: 【医療・介護政策に関する実証的検証】 住民ボランティア運営型地域サロンによる介護予防事業のプロジェクト評価." 社会保障研究 46(3): 249-263.2010.

  • 竹田徳則:地域介入による介護予防効果検証 : 武豊プロジェクト.総合リハビリテーション 42:623-629, 2014.

  • 大浦智子,竹田徳則,近藤克則,他:「憩いのサロン」参加者の健康情報源と情報の授受 : サロンは情報の授受の場になっているか? .保健師ジャーナル 69:712-719, 2013.

  • 木村大介,竹田徳則,砂原信行,他:運営ボランティアとして介護予防事業に参加している地域在住高齢者の認知機能と社会活動の2年間の変化.日本認知症ケア学会誌 12:429-439, 2013. 

  • 竹田徳則:認知症の一次予防に着目した取り組みと可能性.日本認知症ケア学会誌11:629-634, 2012.
     
  • 木村大介,竹田徳則,太田崇:地域在住高齢者の認知機能低下に関するスクリーニング検査項目の検討.作業療法30:626-630, 2011. 

  • 木村大介,竹田徳則,太田崇:「憩いのサロン」事業参加高齢者における軽度認知機能障害(MCI)該当者の割合.作業療法ジャーナル 45:1087-1091, 2011.

  • 近藤克則・平井寛・竹田徳則・市田行信・相田潤:ソーシャル・キャピタルと健康:行動計量学37(1):27-37,2010

  • 竹田徳則・近藤克則・平井寛:心理社会的因子に着目した認知症予防のための介入研究ーポピュレーション戦略に基づく介入プログラム理論と中間アウトカム評価ー.作業療法28(2):178-186,2009

  • 平井寛・近藤克則・竹田徳則:敬老堂をモデルとしたポピュレーションアプローチの試みー武豊町介護予防モデル 事業「武豊町憩いのサロン」-.日本福祉大学 社会福祉論集特集号:99-107,2008

  • 近藤克則・渡辺邦夫:介護予防における健康格差とポピュレーション・アプローチ.OTジャーナル:42(12):1207- 1215, 2008

  • 平井寛:高齢者サロン事業参加者の個人レベルのソーシャル・キャピタル指標の変化.農村計画学会誌28特別号:201-206,2010.

  • 平井寛,近藤克則:住民ボランティア運営型地域サロンによる介護予防事業のプロジェクト評価.季刊社会保障研究46(3)2010.

  • 竹田徳則:介護予防,認知症.作業療法ジャーナル 42:665-669,2008.

  • 竹田徳則:ポピュレーション戦略による認知症予防.認知症ケア事例ジャーナル1:437-444,2009.

「新しい健康日本21へのヒント」(保健師ジャーナル)
 日本中の各自治体で行われている事例を、関係者の声から拾い上げた事例集が保健師ジャーナルで特集されています。地域住民や関係機関とどのように関係性を構築し、疾病予防や介護予防の結果を導いたのか、現場レベルでの様々なコツや新しいアイディアに満ちています。コメンテーターとして、2013年はJAGESコアメンバーの浜松医科大学公衆衛生学 尾島俊之 教授、2014年と2015年はJAGES代表の千葉大学 近藤克則 教授が各事例に対して考察を加えています。

2015年
4月号
「介護予防による地域づくりに地域診断システムを活用 島根県における市町村支援の取り組み」保健師ジャーナル 71(04): 334-339.

6月号 (通常号) ( Vol.71 No.6)
「特集 健康日本21(第2次)の初期評価」健康日本21(第2次)では、「健康の社会的決定要因への対策」として、健康格差の縮小、ソーシャル・キャピタルの向上など、さまざまな社会環境の整備を展開していく必要性が示されました。本号では、3年目を迎えた健康日本21の現状での課題を整理し、今後への展望について,さまざまな視点から述べていただきます。
近藤尚己:健康格差の評価・測定とその活用 熊本県御船町での取り組み事例より


地域診断を起点とした地域住民や関係機関との協働のまちづくり
 保健ジャーナル記事:介護予防Webアトラスを活用した松浦市の試み
地域にあるニーズを地域診断で把握し、地域にある資源(サロンや移動販売者)と結びつけたサロンは、ボランティア移動販売者は業者という点も、行政だけでない地域資源を活用した点が教訓的です。
以下引用――月に2回(第2・4水曜日)、普段あまり活用されていない老人憩いの家(高齢者集会施設)を利用して高齢者が気軽に立ち寄れる場所「お寄りまっせ」を立ち上げた。そこでは、普段孤食である高齢者が皆と一緒に食事を楽しめるように介護予防サポーター手作りの昼食を提供するようにした。また、この地区には商店がないため、「お寄りまっせ」に来られた際に食料品・日用品の買い物ができるように、移動販売車に来てもらうことにした。車いすの高齢者や交通の便のない高齢者には、地域の高齢者施設による車いすの貸し出し(寄贈もあり)や送迎の協力も得られ、常時10名前後の参加者が集い、介護予防サポーターとともに和やかで楽しいひと時を過ごしている。移動販売車の利用者も増加し続けており、会計のアルバイトを雇うほどの盛況ぶりである。
引用元:山谷 麻由美, 荒木 典子, コメント:近藤 克則. 「事例集:新しい健康日本21へのヒント 地域診断を起点とした地域住民や関係機関との協働のまちづくり 介護予防Webアトラスを活用した松浦市の試み」保健師ジャーナル 2014; 70: 812-6

  • 山谷麻由美,近藤克則,近藤尚己,荒木典子,藤原晴美:長崎県松浦市における地域診断支援ツールを活用した高齢者サロンの展開 -JAGESプロジェクト-,日本公衆衛生雑誌,63(9):578-585,2016 (査読有)

  • 中村廣隆,小嶋雅代,村田千代栄:住民主体の介護予防に向けた取り組み : 地域課題の共有するワークショップを通じて.東海公衆衛生雑誌 = Tokai journal of public health 4(1):55-59, 2016

  • 岡田栄作, 杉田恵子, 櫻木正彦, 尾島俊之, 近藤克則:福祉の現場から 地域包括ケアシステム構築のための地域診断活用支援プログラム開発の試み, 地域ケアリング:18(1):56-60, 2016 (査読無)

プレスリリース(https://www.jages.net/pressroom/
  • No 092-16-2 地域診断にもとづく高齢者の通いの場づくり~JAGES地域診断支援ツールを活用した長崎県松浦市の成功例~

  • No108-17-0 住民主体の介護予防ワークショップを開催 ―地域住民との地域課題共有の実践―
 
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