下記の論文を日本語訳しました。(担当:長嶺由衣子) van Oers JA, Bongers IM, van de Goor LA, Garretsen HF. Alcohol consumption, alcohol-related problems, problem drinking, and socioeconomic status. Alcohol and Alcoholism. 1999;34(1):78-88. 【背景】 一般的にSES(社会経済階層)の低い人ほど健康状態が悪く、健康問題を多く抱えており、短命であると言われている。SESの低さと健康の関連は明らかになっていないが、生活様式に関する因子が介在的な役割を果たしていると思われる。 【目的】 オランダ・ロッテルダムで行われた8000名の一般人口調査から、SESとアルコール消費量、アルコール関連問題、危険飲酒の関連についてより深い視座を得ること。 【方法】 オランダロッテルダムの住民票から無作為抽出したオランダ国籍を持つ16歳から69歳の男女8000名。1994年晴に行われた郵送による質問紙法で、回収率は44.2%であった。16歳から44歳の女性で最も回収率がよく、男性は回収率が悪かったため、年齢と性別で調整。説明変数として教育歴を用い、目的変数としてアルコール消費量、アルコール関連問題、危険飲酒を用いてオッズ比を計算した。 【結果】 一般人口においては、男女ともに教育レベルが高い人ほど飲酒していることが明らかとなった。他方、男性では、過剰飲酒(excessive drinking)、特にvery excessive drinkingは最も教育レベルの低いグループで多かった。女性では、過剰飲酒と教育レベルの間に明らかな関連は認められなかった。飲酒行動の差異で調整すると、男性では精神的依存と社会問題が中間教育レベル層で最も多く見られた一方で、同じ教育レベルの人々においては泥酔になる人は少なかった。女性では、教育レベルと精神的依存の間には負の相関を認め、感情をコントロールするための飲酒は最も教育レベルが低い層で多かった。問題飲酒については男女ともに教育レベルとの関連は認められなかった。 【考察】 飲酒習慣については教育レベルと関連があることが示唆されたが、過剰飲酒については明らかな関連は認められなかった。さらに、飲酒行動で調整すると、男女ともに教育レベルが低い層でアルコール関連問題がより高いことが示唆された。 |